フランス南西部のワインとはどのようなものですか?
簡潔な回答
南西部ワインはボルドーとピレネー山脈の間の4万ヘクタール以上に広がる産地で、カオール(マルベック)、マディラン(タナ)、ジュランソン(グロ・マンサン甘口)、コート・ド・ガスコーニュ(白)などが代表格。ボルドー商人に長年流通を阻まれた歴史を持つ「陰の宝庫」として再評価が進む。
詳細な回答
フランス南西部のワイン産地は長年「ボルドーの陰」で知られる機会を逃し続けてきた歴史的な存在だ。ボルドー商人たちは歴史的にガロンヌ川とドルドーニュ川の上流産地からの流通を阻害し、自らの産地のワインが先に市場に出回るよう取り計らった。この経済的障壁が取り除かれたのは20世紀以降で、それから産地の真のポテンシャルが徐々に世界に知られるようになってきた。
カオール(Cahors)はマルベック(現地名コット)品種の世界的な「故郷」として知られる。アルゼンチンでマルベックが世界的成功を収める前から、カオールはこの品種を100%使用した「黒ワイン(ヴァン・ノワール)」で知られていた。ロットス川の石灰岩台地(コース)で作られる濃縮した赤ワインは黒果実・皮革・スモークの個性的な風味を持ち、10〜20年の熟成に耐える。
マディラン(Madiran)はタナ品種を主体とした力強い赤ワインの産地で、バスク地方に近い。タナはとりわけタンニンが高く(「タナ」という名前は「tannin」に由来する説がある)、若いうちは非常に硬いが、熟成でスパイス・タバコ・なめし革の複雑さへと変容する。心臓病予防のプロアントシアニジン含有量が世界最高水準という医学的研究もある。
ジュランソン(Jurançon)は白ワインの産地で、辛口と甘口(ヴァンダンジュ・タルディヴ)の両方を生産する。主品種のグロ・マンサンとプティ・マンサンはピレネーの気候の影響を受け、凝縮した熱帯果実・パイナップル・サフランの個性的なアロマを持つ。ジュランソン甘口はフランス国王アンリ4世が生まれた時にこのワインを唇に塗られたという伝説を持つ。
驚くべき事実として、南西部はフランスの中でも最も多くの「固有品種の孤島」を守っている地域の一つだ。タナ、コット(マルベック)、プティ・マンサン、グロ・マンサン、マンサン・ノワール、フェル・セルヴァドゥ等の品種はここ以外ではほとんど栽培されない。この生物多様性は、ワイン世界のアマゾン熱帯雨林とも言える貴重な遺産だ。
カオールのマルベックはアルゼンチンのマルベックとの比較が非常に興味深い。アルゼンチン(メンドサ)のマルベックが豊かな果実味・柔らかいタンニン・高いアルコールでリッチなスタイルを示すのに対し、カオールのマルベック(コット)は石灰岩台地の痩せた土壌からより鋭い酸・硬めのタンニン・ミネラル感を持つ。同一品種が異なる土壌と気候でこれほど異なる表情を見せる事例は、テロワール概念の最良の実例の一つだ。南西部のカオール・マルベック(コット)は、近年アルゼンチンのマルベックの世界的成功によって逆照射的に再発見されている。アルゼンチンで有名になったこの品種の「故郷」として、南西部のワインへの関心が高まっている。故郷と新天地でそれぞれ全く異なる表現を持つ同一品種の比較は、ワインにおけるテロワールと気候の影響を理解する最良の事例となっている。